法人成りする場合の注意点とは?

個人事業主から法人成りすると、赤字の繰り越し期間が延びたり、従業員のSEに出す出張手当や生命保険を経費で落とせたりするほか、個人事業主より社会的信用度が増すといったメリットがあります。しかし懸念事項も少なくありません。まず、従業員を1人でも雇用する場合は、社会保険の加入が義務付けられています。個人事業主は5人以上雇うと社会保険の加入が必要な一方、法人は1人でも従業員がいれば加入することになり、小規模のIT企業でも加入手続きが不可欠なのです。

従業員と折半する健康保険や厚生年金保険の保険料の負担も小さくありません。また、法人は赤字でも法人税がかかります。これは、法人住民税の均等割と呼ばれるもので、東京都に所在地のある法人は、法人として活動する限り最低7万円を法人住民税として毎年納めることになっています。これに加え、地方法人税も課されることになりました。それから、プロバイダ契約や賠償責任保険などの費用も、法人名義だと個人より高くなります。

何よりも、株式会社を設立した場合は、株主総会の召集や開催に手間暇をかけなければなりません。個人事業主と異なり、株主の意向を汲み取ることも重要なのです。そして、個人事業主なら、会計ソフトやクラウドの確定申告サービスなどを利用して会計処理や確定申告を行えましたが、法人成りすると経理が複雑化し、税理士に頼まないと確定申告の期限までの提出が難しくなるでしょう。税理士は、1回の処理につき何十万円もの報酬を請求するため、毎年アプリやソフトの開発において相当の収益を上げることが必要です。